韓国の朴槿恵大統領は歴代大統領と同じくスキャンダルで民衆に追い詰められている。親友の崔順実被告による国政介入疑惑について国民向けの談話を発表、「任期短縮を含む進退問題を国会の決定に委ねる」と述べ、2018年2月の任期満了を待たずに辞任する意向を表明した。
これは、過去に何度も韓国で見てきた光景である。大統領が何らかの不正をしていたことが退任後に明らかになり、その後は悲惨な末路を送る。朴氏は任期中という異例の事態ではあるが、ジャーナリストの櫻井よしこ氏と拓殖大学教授の呉善花氏が、韓国ではなぜ同じような悲劇が繰り返されるのかについて語りあった。
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櫻井よしこ(以下、櫻井):それにしても、清廉と思われていた朴槿恵(パククネ)大統領が、なぜこんなことになってしまったのでしょう。
呉善花(以下、呉):韓国国民にとっては、期待が高かった分、裏切られたという気持ちが非常に強いのです。父親の朴正熙(パクチョンヒ、1963~1979)大統領も母親の陸英修(ユクヨンス、1963~1974)さんも倹約家として知られ、「国父」「国母」として尊敬されていました。私も青年時代に国母さまは服も一番安い生地で作っていたとか、チマチョゴリを自分で縫い直したという話を聞かされたものです。
櫻井:その陸さんが1974年に殺害され、朴槿恵大統領はお母さんに代わって“ファーストレディ”としてお父さんに寄り添った。それが彼女の人気の源になっていますね。
呉:そうなんです。同時に朴槿恵大統領は母親の清潔なイメージを利用しました。
韓国人は白が好きで潔白の意味があるので、お母さんは白を好んでいました。その潔白を自分のイメージにして、ヘアスタイルもお母さんにそっくりにしている。しかも独身で男性関係がないので、韓国人の多くは彼女を「天使」のようだと考えてきました。だから、就任後しばらくは誰も彼女を批判することができず、問題があっても「宝石にも埃がつくことがある」と言われたほどでした。
櫻井:宝石ですか……。そう言えば彼女は「お姫さま」と呼ばれていました。
呉:はい。まさにそのイメージで、セウォル号沈没事故(2014年4月)が起きるまで、批判はタブーでした。
お母さんが殺害された後、崔順実(チェスンシル)容疑者の父・崔太敏(チェテミン)氏が朴槿恵大統領に接近したことはすでに報道されている通りですが、それだけでなく、父親の朴正熙氏が暗殺されたのも、崔太敏氏との関係が大きな原因の一つだったと考えられます。
朴槿恵大統領が崔太敏氏に操られ、朴正熙大統領は娘の言いなりになっている。これでは韓国が危ういということで、側近のKCIA(韓国中央情報部)部長が朴正熙氏を暗殺したのです。